『えーと、俺の名前は山川幸雄』再び
第16話『俺は、おとぎの国に行ったんだ』
俺の名前は山川幸雄 。永遠の58歳。 趣味は自転車。 牛乳配達人。 生活保護受給者。
お~い!山川だ、山川だ、俺はヤ・マ・カ・ワだっ!
俺はまだ生きていて、こうしてたまに蘇る特技を持っているのさ。
一言言っとくぜ!そこの若けぇの、俺をライトノベルなんかの軽い読み物と勘違いするなよ。
俺はこないだ、コメを大量に貰ったんだ。どれだけ大量かというと、俺の体重分くらいの重さはあったぜ。
俺は誰がどう見ても裕福じゃないから、太っていねぇけど、それなりに骨ばっている分、骨密度?はあるのさ。それって骨が重いって事だろ?
俺にコメをくれた奴は、スーパー麻生の店長だぜ。そいつはまさに、スーパー麻生の店長って顔してやがるよ。
そいつが、売れ残ったコケコッコーマイっていうのをやるから、早朝4時に店の裏に来いって、偉そうに呼び出しだ。俺はドキドキしながら行ったのさ。
長蛇の列でも並んでやしないかと思って、5分前行動さ。
店の裏に一人突っ立っていた。暇だから、暇つぶしに、じーっと地面を眺めながら考え事をしたのさ。
俺は、コケコッコーマイだか何だか分からねぇコメを貰っても嬉しくないんだ。俺の家には、炊飯器がねぇから、生米貰ってもそのまま放置さ。
それでなくても、景品で貰ったコメがあって、それは確か20年くらい前の熟成米さ。
コケコッコーマイが何だか知らねぇが、とにかく俺は嬉しくも何ともないんだ。
だけど、貰えるものは貰うんだ。枕の代わりにでもするさ。
山川:「よう、アニキ。来たぜ、はるばる、朝の4時だ。」
店長:「お前、この米食え。この辺じゃ、全く売れなかったんだ。とにかくまずいから、あんまり期待するなよ。」
山川:「なんだ、コケコッコーマイはそんなに不味いのか?俺はグルメじゃないぜ、味の違いがわかる男じゃないんだ。」
店長:「ふんッ、まぁいいや、売れない在庫抱えるよりマシさ。お前にくれてやる。ボランティア活動だ。俺は貧しいお前にタダでコメを分けてやる、善人だ。ありがたく食え。」
俺はそのコケコッコーマイをどうにかこうにか持って帰ったのさ。途中で気が遠くなりかけたがな。そんで、俺はふらふらになりながら家の門をくぐった。
もちろん門てのは比喩で、そんなモンはありゃしねぇ。
そんで、俺の細い足首がクリっとなって、母ちゃんの猫の額ほどの畑にそのコケコッコーマイをぶちまけちまったのさ。
ひと粒たりとも残すことなく、だ。
俺は呆然と、そのまま立ちすくんでいたのさ。俺は、たまにそういう風に暇をつぶす事があるんだ。そういう時の俺はまさに無だ。
小一時間もして、上空を山鳩の大群が旋回し始めた。
そいつら、畑に急降下してコメをついばみ始めたのさ。
それはまるで平和のおとぎ話の国の様だったよ。
俺は白みかけた朝もやの中、平和のおとぎ話の国にお邪魔したのさ。
お終い。
ライトノベルにすらならない山川の図
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